第九十一段 不健康食品?

 健康と食については、テレビの捏造問題以後チョッとトーンダウンしているだろう。健康番組は検証が甘いという本もあるのだが、今回のは決定打というところか。この本の場合はやせ薬、健康食品、漢方薬という分け方でより広範囲な内容になっている。最初の方に出てくるフェニルプロパノールアミンは花粉症に効く成分とされていたが、脳出血が起きるというので製薬会社も廃止したほど。あれがやせ薬として出回っていたとは・・・。健康食品にしても漢方にしても肝障害が多いのはチョッと嫌だ。しかもこれ、単に「あれはダメ、これは危ない」というだけの本ではない。大量の文献や患者の記録から医大の先生がまとめたものなのだ。読みやすいけれども、本当はお医者さん向けなのかもしれない。
 飛ばし読みをしても、買い置きしておいた物を捨てたくなる様な重い内容なのだが、本当に危ない物以外は、大部分が偽の原料や早く効かせようとして飲み過ぎた結果だったりする。まあ深刻に考えたら何も食べられなくなるから、読む時もその辺を心得ておいた方が良い。先生方も処方の時にパッチテストをするなどしなければいけなくなるかな。

「健康食品 中毒百科」 内藤裕史 著 丸善

第九十二段 法律で決ってるからダメ

 話題だと言うので買っておいたがやっと読んだのがこの本。結構読んだ人も多いだろうが、知らない人の為にご紹介。世界には、いや日本にも?な法律があるのだなと実感させられる1冊。帯にまで印刷されているので著者もお気に入りなのだろう1文は、「スタイルが悪い女性はビキニを着てはならない」というもの。これを皮切りに、変わったというか笑える法律のオンパレード。条文の下に解説がチャンと載っているので条文のできた経緯なども解る様になっている。まあ本文だけでも笑えるのだが、ところどころ条文をネタにしたマンガが挿絵で入っている。これも結構しょうもなくて笑えるのだ。
 確かに海外のは凄い。何と言っても徹底している(それだけ笑えるが)。でも読みながら「いやぁ文化が違うと法律も違うな」などと言っていると、日本の条文に絶句することになる。“国産”で意外とキツイなと思わせるのが千葉県柏市の条文。「吸殻やゴミのポイ捨てをしたら「広報かしわ」に氏名と住所を公表する」というもの。現代生活を考えると罰金やボランティアよりキツイ刑かもしれない。
 ただ笑えるだけではない。海外旅行にも使えるかもしれない。シンガポールは「ガム」禁止だから、持込もダメなのでご注意。

「へんなほうりつ」 のり・たまみ 著 扶桑社

第九十三段 寺

 週刊誌だとここを読む頃には店頭に無いかもしれないが、チョッと気になるネタが載っていたのでご紹介。週刊ダイヤモンドは経済誌だが、今号は寺と墓の特集だ。1兆円強の巨大ビジネスでありながら問題山積という世界。この特集ではお金ばかりでなく、無住寺の悲惨さや跡継ぎの苦労、本山の内情といったところまで書いている。「こういうことが知りたかったよね」というのが読後の感想。
 今までは、お寺向け定期購読の「寺門興隆」くらいしかなくて、一般人は知ることができない話が多いと思う。この記事で、我等が無住の寺をどうにかするアイデアが浮かぶかもしれない。これは他の地域でも大いにある話だ。「オヤ?」と思った檀家の皆さん、バックナンバーを取り寄せましょう。

「週刊ダイヤモンド08年1月12日号」 ダイヤモンド社

第九十四段 家族かペットか

 精神科医の香山リカ氏の本。話はイルカセラピーから始まって、人間より犬や猫を愛してしまう人の心理を解き明かす。でも“香山節”だから、精神医学を振り回すでもなく、とても読みやすい。家庭を持つことを全く希望せず犬猫と暮らすことの分析は確かに精神医学だが、「ノラ」保護派と嫌悪派の確執や、過激な愛護団体の発生などはもう社会学。動物への執着が小子化の原因ではないかというのも頷ける。作家や強面のジャーナリストも自分のペットのことになると顔が緩んでしまうという内緒話も面白いが、海外の過激な愛護団体の実情は恐怖まで感じる。しかも彼等は日本を狙っているとも。もうただの精神科の話ではなくなっている。何でも極端に走り易い日本だから、一度みんなで話し合った方が良い様な・・・。

「イヌネコにしか心を開けない人たち」 香山リカ 幻冬舎新書

第九十五段 ひきこもり

 「ひきこもり」というのも珍しくなくなっていると思うが、何と海外へ脱出して“こもる”という人がいるそうだ。この本はそういう人を「外こもり」と呼んでいるが、本が書けるほど人数が居るのがまず驚きだ。主たる舞台はバンコクなのだが、アルバイトなどで集中して金を稼いではそういった外国で暮すというのだ。
 あちらでは事業をするでもなく、ゆるく流れてゆく生活がほとんど。確かにあちらで「ひきこもり」状態だ。キッカケはやはり生き辛さが多い様だが、「日本を出てまで」というのは興味を引かれる。それ程日本というのはギスギスしている国なのか。あちらの国では僅かな金でも生活できてしまうからこそ可能な話なのだが、この希望の無さ・・・。教育関係の人は一度読んでみて欲しい。

「日本を降りる若者たち」 下川裕治 講談社現代新書

第九十六段 介護は何色?

 会社の内装などの色でやる気を出そうというのはあったが、今回は「老人と色」についての本。清潔第一ということで、施設や病院は白を基調にし易いが、真っ白な部屋は認知症を悪化させてしまうという。若くても、入院中は気が滅入るという経験を持つ人はあるのでは?そういうことも“白”の影響だ。だったら、壁の色や家具類のコーディネートはどうしたら良いか。その辺のことを良く書いている本。
 もちろん色彩についての話だから、建物だけでなくお化粧や服装の気分への効果も説明している。そこで忘れがちなのは介護する側。介護者の服装やお化粧についてもしっかり書いてある。ただの理論書ではなくて、著者が実地に施設へ通って書き上げたもの。つまり実用書だ。介護事業者も家族も読んで為になる本だ。

「介護に役立つ[色彩]活用術」 南 涼子 著 現代書林

第九十七段 ブーム?

 ずいぶんと書店へ行ってなかった。久しぶりの掲載。よく商売はニッチを狙えと言うが、大ブームで儲ける「メガトレンド」はもう無いよというのが今回の本。無いというか、細分化したニーズを掘り当てよという話なのだ。よくあるビジネス書ではなくて、こんな人たちが増えているという内容。これまでの感覚で見ると大変変わった人たちということになるのだが、これから一つのカテゴリーを作るだろうという。本ではそれを「マイクロトレンド」と呼んでいるが、つまりそういった人たちのニーズに合わせた商品、サービスを考えたら良いということ。
 欧米の事例なので、日本国内ですぐ応用できないというのはあるが、監修の三浦氏が独自で日本の傾向などを付け加えている。別に考え方を参考にして国内向けのモノを考えれば良いわけだし、輸出をメインにするならそのまま参考書になる。副題は「世の中を動かす1%の人びと」とあるが、世界の60億人の1%といえば結構な数なわけだ。
 また日本でブームという物が世界へ売れることもしばしば。ミクロなニーズも大化けするかもしれない。「マイブーム」というのは違うと思うが、それでも集まれば一つの市場になる。とにかく人の話を聞いて、街を観察しよう。

「マイクロトレンド-世の中を動かす1%の人びと」 マークJ.ペン著 三浦 展監修 NHK出版

第九十八段 数

 スーパーの売り出しで値段の末尾が8円になっているとつい買ってしまうという説は聞いたことがあるかと思う。それは何故なのかという話から、数字の言葉としての響きの研究へ続く。「8、100、1000」の表現するもの、「3」の安定感、「%対割」についてと広く数字についての解釈をしている。
 かなり広範囲で著者は物凄い学者なのかと言えば、人を集めて情報収集し議論したとのこと。だから話がこなれていて面白いのだろう。著者は映像におけるサブリミナル効果に対し、この「数がイメージさせるもの」を“数リミナル”と呼んでいる。値段付けの話の他に本のタイトルで「9割」というのが増えている理由などを解き明かしていて、国語学や心理学ではなくてポップ作りや広告といったマーケティング用の本だろう。穴埋め式のマーケティング教本が増えているが、元を理解しないとヘンテコなものになってしまうものだ。その辺、この本が役立つかもしれない。

「アイドルのウエストはなぜ58センチなのか」 飯田朝子 著 小学館

第九十九段 温故知新

 代々続く企業は色々と努力、工夫をして今に至るのだというのは、理屈では解っていても実際どんな理念でやっているのかは知らないものだ。そのあたり、代表的な企業の話を一度に読むことができる本。それぞれの創業から、危機を乗り越えた時の話が載っている。多くは江戸時代から続く企業(店)なので、飢饉や江戸の大火に政変と、今の不景気どころではない苦難があったわけだ。その乗り切り方や活かし方は参考になるかも。鳴り物入りで現れたかと思うと、数年で消えてしまう最近の企業とは、どう違うのか考えるのにも良い。まあ大体が「儲けて贅沢したい」なんて考えではできない話ばかり。家訓から始まる各企業の話は、基礎固めから入ることの大切さを教えてくれる。大企業になったといっても自分の代では実現しないことも多いわけだから、先を見通すというのも大事なこと。それができていれば、結局儲かるというわけだ。
 最近は不正で潰れる会社も目立つが、家訓という規則も無いのでは長くは続かないということなのか。

「商売繁盛・老舗のしきたり」 泉秀樹 著 PHP新書

第百段 社長、それダメ!

 ビジネス書も結構な数が出ているが、何とかの方法論というのがほとんど。100冊記念で少しは変わったものをと探してみたが、今回は社長業の考え方を問い直す本だ。言われて耳が痛い人も多い様な話で、結局こういう話を傾聴する姿勢が無いといけないということだ。本を広げて、まず“節電して赤字が増えた”という辺りに「えっ!」と驚くだろう。これも短絡的に節約が悪というのではなくて、節約の為に奔走してしまって本業を御留守にしてしまう間違いを言う。タイトルも本文も「バカ社長」と言って突き放しているが、「会計士の立場からご忠告しておきますが」という丁寧語を取り去っただけ。ストレートだけどもその分読みやすい。ちなみに、批判だけして放っているわけではない。著者の反省から書かれている部分もあるのだ。
 攻撃の対象は社長だけでなく、管理職にも及ぶ。客観的に問題な上司というのは、営業上の損失だと書いているが、読んで大きく頷くサラリーマンも多いのでは?かく言う自分もサラリーマン時代を思い起こせば、「あの人はこうだったよね」という実体験がある。だから気を付けているつもりだが、読んでいると「おっといけない」と思うところもある。やっぱり満点は取れないか。日々反省は必要だ。
 こういった会社運営のツボがメインだが、価格設定のツボなども解り易く書いていて、社長の暴走を思い止まらせる好著だと思う。社員の側からも自分の会社というものを考えるには良い本だ。

「ダメ社長論」 山田咲道 著 日経プレミアシリーズ