第八十一段 これぞ対策マニュアル?
カンニングの竹山君は芸人だが、本を書いている。それがまた自叙伝などではなく、振り込め詐欺についてのルポ。彼は関西では謎を追及する番組に出演したりしていて、こういうことは好きだったのだ。「また芸人のいい加減なネタ」と思ってはいけない。大阪では何故振り込め詐欺に引っ掛からないのか?という疑問を解くことで、対策を考えようとしているわけだ。勝手に考えて書くのではなく、大学教授を含めてチャンと対談もしているし、個人情報が漏れる信じられない事例も載せているのだ(これは必見か)。
それぞれ取材での対談だが、実際の犯罪グループとの対談がやらせだったとしても、内容の濃さで全く相殺できる。とにかく、「ケチ」「警察などの権威に屈しない」「近隣とのコミュニケーションが良くできている」という大阪文化が振り込め詐欺を成功させない秘訣だという。帯にもある通り、「防衛のヒントは大阪にある」様だ。
「カンニング竹山と考える-大阪人はなぜ振り込め詐欺に引っかからないのか」 竹山 隆範 著 扶桑社新書
第八十二段 心食同源?
「体調を整えるのに食事で対応」というのはさんざん聞かされた。テレビでの誇張問題があってもなお、本屋には「あれが効く」の本が並ぶ。もう少し変わった本は無いのかと思っていると、あった。精神状態を食事で正すというのだ。PART1はイライラ、憂鬱、迷い、集中できないその他涙もろくなったまで、それぞれに対応する食べ物と食べ方を紹介している。効く仕組みも書いてあるので納得がいく。PART2は、うつになりやすい生活習慣。ここに「体のためでなく、心を落ち着かせるために、間違った食べ方をしてしまっている」というくだりがあるが、腹ではなく“目が欲しい”状態は良くないのだというのが解る。PART3はうつに効く15の食習慣とあるが、ウォーキングや良く噛むことも上げられている。面白いのは日頃敬遠される塩が脳を活性化させるという話。全部マッタリ味の食事ではやはり心もボヤけるのか。
「うつ」は食べて治す 生田 哲 著 PHP
第八十三段 オタクを知る
帯の「2000年代の日本はこの本を読まずには語れない!!」とかいう言葉に引かれて手に取ってしまった。で、何の本かというと、オタクの歴史と現状について述べているわけですねぇ。ただ、何々論でずっと流れていくのではなくて、作品から読み取るところがおもしろい。何と言っても、本を書くにあたってこの哲学の教授がアニメやフィギュアをジックリ見ているわけだから、そこを考えただけで笑えるというもの。しかも変に細かく分析しているから、真面目な文章を読んでいるのに笑ってしまうのだ。
途中哲学的な解説があるものの、オタクの消費行動や思考が解るので、商売人や教育関係者が読んでもおもしろいと思う。しかしデータベース化した背景の物語か・・・。絵本作家の人もチョッと勉強のつもりで読んでみたら?
「動物化するポストモダン オタクから見た日本社会」 東 浩紀 著 講談社現代新書
第八十四段 コスト
コスト削減といえばコピー用紙の裏までも使う、リストラといえば人員削減。これが普通の会社だと思う。ところがそれは間違いだというのがこの本。
印刷済み用紙の裏を使って、表裏どっちが要件なのか判らないところから混乱。結局時間の無駄になるという話から始まる。リストラで残った人が疲弊してしまっているのは社会問題にもなっているが、他のコストを下げて人を増やし、顧客サービスなりを充実した方が業績アップになると断言している他、下がらないと思い込んでいる固定費が下がることを示している。
後半、正しいコスト削減の方法を挙げているが、著者にコンサルを依頼する経費を考えたら、この本1冊を各部署に配布してみたら良いのではないかとさえ思う。これを読めば手始めに身の回りの倹約くらいすぐできる。とにかく採用と給与アップができなければ本当はオカシイのだから、経営者の皆さん1回読んで欲しい。日本のためにも・・・。
「コピー用紙の裏は使うな!」 村井哲之 著 朝日新書
第八十五段 人を見る目
採用に当たっての人の見分け方、またはどんな風にしたら自分は“売れる”人になれるのかについてのムック。まあ採用で失敗しない為の教本というところなのだが、最初の稿は大前研一さんが書いている。これがまた辛口だけども引き込まれる。予想が付き難い世の中に、朝一番に日経を読んでいてはダメだと切り捨てる。ニュースは自分で選べということなのだ。また高学歴からの知識やマニュアル本で武装していると対応できない世の中だという。確かにそうだろう。MBAなどもうダメだという話もあるくらいだ。礼儀は大事だが高度成長期の経験や個々の会社のシキタリはあまり役に立たない。
そんな今に、稼げる人とはどんな人かについて色々書いてある本だが、経営者がまず読んでおいた方が良いのではないかと思う。ネタ探しは街角をうろつくことから始まるが、本当は世界の街角をうろつくべきなんだろう。だから国境を見に行けという話もあるんだが・・・。
「人を見抜く力」 セオリーvol6 講談社
第八十六段 やっちゃった人
健康法などを自分で試すのは嫌いではない。人体実験と言えなくもない。ただここまではできない。これは世の発見、発明の裏には“ホントにやっちゃった人”がいるという話。麻酔技術、放射線治療の研究なんていうと、もう大体想像がつくだろう。それ以前の時代に、消化の仕組みを知るため「出て来たモノ」をもう一度・・・。なんていう話はもう一部の愛好家以外やらない所業だ(表紙のイラストはその人を象徴しているな)。
とにかく現代の科学を作った“偉業”なんだが、「科学への愛」と言われてもやってる事があんまり極端なので笑いが出てしまう。何せ、失敗すると死んでしまう様なことばかり。肉体派芸人もこの位やってみなさいと言いたい。しかしこの位入れ込まないと発明などはできないということか。やれやれ。
「自分の体で実験したい」 レスリー・デンディ メル・ポーリング 著 紀伊国屋書店
第八十七段 辞典
大修館の辞典を持っている人も多いだろう。当然「お堅い会社」のイメージがある。そこへこの本だ。その落差だけでも面白い。これまた内容が若者の流行り言葉を辞書化したというからオカシイ。まあ若者言葉は変化が速いから、古本になるともう価値がなくなるだろう。初版から半年あまり、今が旬というところ。読んでみるなら今の内だ。
ただ流石に辞書の会社と思わせるのが、若者言葉の他に、業界語、ネット語など分野を分けて載せているところ。若者言葉だけを期待した人には、意外だったり得した気分だったりするのかもしれない。何と言っても子供と会話できなくなってきたお父さん方必携の書だ。
「みんなで国語辞典!」 北原保雄 著 大修館書店
第八十八段 会計ドラマその2
以前八十段で取り上げたのと同じ著者。やはり会計ドラマというところだが、前のは倒産寸前の会社に社長として就いた若者の奮闘だった。今度は若手社員が古参の社員による粉飾決済を暴いていく物語になっている。
こちらも間に会計の解説が入っていて勉強になるが、やはり行きつけのお店で指南役のマスターからワインをいただくという設定は著者のこだわりか。それにしても税理士で会計士の著者はなんでこんなに読ませる文が書けるのだろう。リストラでの首切りを賭けた若者の奮闘ぶりはチョッとワクワクするので、思わず続けて読んでしまう。
「売るならだんごか宝石か」 林總 著 KKベストセラーズ
第八十九段 つっこみ
「反社会学講座」でも登場したパオロ・マッツァリーノさんの本。講演を収録した本なのだがジョーク満載、寸劇もあって直に聴きたかったと悔しい気分。で、そんなにおかしい会場で何のテーマが語られていたかと言うと、メディアリテラシー。でも“メディア・・・”は知られていない言葉だから「つっこみ力」と名付けようというところから始まって、統計結果やら常識とされていることの怪しさを説いている。
特にホントに困って死んでゆく人が居るのに、数字だけみて理屈をこねているのは間違いだと言う突っ込みには大賛成。全編冗談ではなくて言うべきところは言っている。だから面白いのだろう。でも実際テレビの大真面目な論争も、庶民からみると思いっきりズレている時が多い。著者はチョッとくだけ過ぎているかもしれないが、こんな人が議員だったらと思ってしまう。
「つっこみ力」 パオロ・マッツァリーノ 著 ちくま新書
第九十段 スケベほど長生きとは本当だった?
人は足腰が不自由になるから高齢になると家に篭りがちになるんだ。と、大抵はそう思っているのでは。ところが精神的に「億劫」になるから、身なりにも気を使わなくなるし、そのせいで出かけ難くなる。結局老け込むという悪循環があるからだという。
そういう意欲の部分以外は意外と健全で、運動機能もそんなに落ちない。つまり意欲が問題なのだとこの本は訴える。で、意欲は脳の中でも前頭葉が受け持つが、その前頭葉がいち早く萎縮してくるのだそうだ。著者は高齢者専門の精神科医。行動と脳と精神から老化を考えた本なのだ。巻頭から老化度テストが載っているが、ゲーム機の脳トレも良いけど、行動しないとダメだという。「年甲斐も無く」と顰蹙をかうくらいで良いと。特に感情が大事で、だからスケベは長生きなのであり、実際“あっちの方”もどんどんやってみようと言う。その感情ということでは、中高年がキレやすくなったことを挙げ、それこそが老化だという。そういう感情のコントロールができなくなる、感情の老化が問題だそうだ。
本では、対処法も書いているが、どんな人が危ないかも書いてあるので中年に差し掛かっていたら読んでおいた方が良いのかも。凡事徹底もはまり過ぎると危ないということでもあるし、気をつけないといけないと思った。
まあとにかく、積極的に出かけないと。商売ネタだって歩いていないと見つからない。御上品にしていたらボケてしまう。
「人は「感情」から老化する」 和田秀樹 著 祥伝社新書