第十一段 カラス

 どこでもトラブルメーカーで鼻つまみのカラス。今回は相当マニアックなカラス研究本。あまり知られていない習性、装飾品集め(ピアスを無くして心当たりは?)や遊び好きの一面は面白いが、生きた猫を食べるというのはチョット気味が悪い。カラスにまつわる諺の検証から巣の「物件情報」など実に細かい観察だが、カラス擁護派の立場から書いているので腹立たしい人もいるかもしれない。「勝つためにははまず敵を知れ」ということでは良い情報源か?
「カラスは偉い 都会のワルが教えてくれること」 佐々木 洋 著 知恵の森文庫 光文社

第十二段 注射が怖いよう!

 タイトルがスゴイ。だいたい帯からして「これを読んだら医者にかかるのが怖くなる!」などと書いてある。更に表紙をめくってみると「日本の医療は欧米より拙劣」、「治さず金儲けする病院」、「日本の新薬は欧米では認可されず」と来る。これ、前書きの見出しである。本編に入れば「過半が不適正診療を受けていた」、「安易に行われたやるべきでない手術」、「救急車の行き先で運命が変わる」とより強力に迫ってくる。これはもう「あの店の厨房を見たら食えぬ」などというレベルではない(例えが悪い)。手術を受けたのに何かおかしいので転院したい旨を言ったら怒鳴られた挙げ句、治るはずのものが結局死んでしまったと聞けば「え゛ーっ」と思うはず。それも一人二人ではなく、また特別な病院だけの話ではないとしたら・・・。こんなに週刊誌並みに不安を煽ってどうすりゃ良いんじゃ!と、のけ反ったところで患者自身がちょっとしたことで医療を改善できること、癌の正しい知識や医者(著者)が教える養生訓で後半救われる。そう、これを書いたのは医師。だから内容に説得力がある。
 おっと、まじめな紹介文がカバー後側にあった。「−医療の現実を語りながら患者の「なぜ」に答え、よりよい医療を受けるためにはどうすればいいのかを詳しく説いた評判の一冊」か。判りやす過ぎる?
「新 治る医療、殺される医療―医者からの警告―」 小野寺時夫 著 中公新書ラクレ 刊

第十三段 真面目に○○○の話をしよう・・?

 排水設備について知りたいことがあって買ってみた本。給水、排水については専門書的な造りの解説本が多い中、唯一初心者にも解る書き方だ。専門的過ぎるところは省いてあるし、図もペン書きのイラスト。で、給水までは何でもないのだが、これが排水、と言うかトイレの項になると俄然「ありゃりゃ?」ということになる。なんで真面目な解説本なのに○○○とか思いっきり書いてしまうのだろう?詰まる溢れる臭うの話だということは百も承知だが、そう何度も書かなくったって・・・。しかも箇条書きの解説のところでひらがな、カタカナ、ローマ字と一々表記を変えている。書いた本人、相当マニアックな人物か?
 まあ、そこさえ目を瞑れば大変解りやすいし、かなり実用的で、新築やリフォーム、中古物件購入でしっかり見ておきたい人、水のトラブルで給排水設備に疑問がある人には良い入門書だと言える。不良施工で訴訟を考えているなら、これを読んでから更に詳しい解説書へ移ると良い。
「イラストでわかる給排水衛生設備の技術」  中井多喜雄 著  学芸出版社 刊

第十四段 乙武君より・・・

 多分、多くの人は障害がある人とは純粋で一途な人だと思い込んでいるのではないだろうか。芸術や車椅子でのスポーツに打ち込んだりと。でも本当は違う!皆と同じく欲望だってあるんだと叫んだのがこの本なのだ。自身が四肢障害である著者は積極的に障害者の性の問題に取り組み、今やホームページを開き相談にも乗っている。
 普通大っぴらには話さない自分の性。著者は敢えて詳細に語っている。一気に読ませるその内容は、性という誰にでも一番関心がある部分だし、嘘のない告白だ。彼が優れているのは雑誌などに見せる才覚の他、権利を振り回さないという人間性もある。所謂「若者」は卒業したがやはり若い。その彼が、一部障害者に見られる過剰な「権利の主張」を諫めたり、若者達の自己中心的部分を叱っている。文句を言ってついには利益を得ようとする「ゴネ得」を嫌っているのだ。もちろん性や通学については権利を主張しているが、普通の人と同じ所までなのだ。彼は言う。「声をかけてくれるのはありがたいけど、そんな風に変な感心や同情をするなら、エレベーターのボタンの前の灰皿をどけるデリカシーをください」と。至極もっともな意見だろう。通学についても彼の大学入学後、願書段階でお断りが減ったということもあるのだ。これはもう障害者を解放する先駆者。
 障害者が頑張る姿で人は感動することがあるが、やはりそれは遠い存在に違いない。「テレビの中のこと」で済ませてしまうのではないだろうか?でも本当はどこか貴方の知っているようなところに住んでいて、日常生活に悪戦苦闘している人ばかりなのだ。何も富士山に登りたいのではない。一緒に酒を飲みバカっ話しをしたいのだ。視点が大事である。企業家はこの辺にヒントを見つけるべきだろう。まず一度読んでみては?
「たった5センチのハードル」  熊篠慶彦 著  ワニブックス 刊

第十五段 経済学は難しくない?

 長引く不況に学者陣、新聞雑誌こぞって理屈をこねくり回して現状を説明しようと躍起になっている。でも理論をブチ揚げても、どうなるのか、どうすれば良いのかは結局誰にも判らないのではないか。それでも、何であんなに安売りができるのか、どうして不況なのにゴミは減らないんだ?ということは最低限聞いておきたい。そういう細々したことを知っておくことが、経済全体を知ることになるのだ。この本には教科書的な書き方は一切出てこない。お店の裏口に行ってその仕組みを覗いてくるという形の書き方をしている。なぜオープン価格は増えるのか?など身近な疑問をリサーチ会社が調べるという設定で書いている。難しい本は読みたくない人でもこれならイケル。
 
「なるほど!不思議な日本経済」  日本経済新聞社 編  日経ビジネス文庫 刊

第十六段 こっちの歴史問題

 歴史教科書が問題になっているが、蚊取り線香の歴史書が出た。そんなどーでもいーものを・・と言いたげな貴方、いつから蚊取りは渦巻きなのか?右巻きだったっけ左巻きだったっけ?また、蚊取りの豚のルーツは?チョット知りたくないだろうか。殺虫剤の歴史からパッケージ考、メーカーの盛衰、あの金鳥の看板は何故斜めだったのか、はては「ごきぶりホイホイ」誕生秘話と重箱の隅を突付きまくっている。しかし決してレトロ趣味で商品を並べて終わるのでなく、研究されている。レトロ趣味の人はもちろん、マニアックな研究が好きな人にはたまらない1冊かもしれない。中年層なら「あったよこれ!」の一言が必ず出るはず。
 
「蚊遣り豚の謎−近代日本殺虫考-」  町田忍 著 新潮社ラッコブックス 刊

第十七段 また温泉の話

 また温泉か、しかも夏だぜ。という意見もあろうかと思うが、次の休暇に備えてと思って欲しい。この本、まず違うのが温泉発見伝説と歴史の検証から入っていること。次に温泉の効果とは何かを40ページ近く使って解説しているのは、闇雲に温泉に入るのを改めさせてくれる。その他どんな温泉が良いか選別方を教えてくれたり、世界の温泉にまつわる歴史的事件なども楽しませてくれる。ただ実際に何処へ行くかは旅行ガイドブックを読んだ方が良い。
 
「温泉で、なぜ人は気持ちよくなるのか-名湯の条件-」  石川理夫 著 講談社+α新書 刊

第十八段 みんなの好きなマックだが・・・

  マクドナルドは今では国民の生活に溶け込んでいる。もちろん本場アメリカではファーストフードは巨大産業。その材料の市場や工場も巨大だ。ところが大きいだけに裏側にはいろいろな問題があるという。これはマクドナルド誕生からの歴史と関連する食料生産の裏側を取材した本。創生期からのドロドロした業界戦争や労働問題はありがちな部分かもしれないが(それでも酷いが)、農家や酪農家の悲鳴(日本より酷い)、食べてもいいのだろうかという程の内容物(昔のネコドナルドの噂もブッ飛ぶ話)、隠し通された食中毒、止められなくなる理由、学校への浸透などこんな本書いて暗殺されないのだろうかと思うほどの内容だ。
 300ページを超えるボリュームと詳細なレポートは「研究書」と言って良く、週刊誌のスクープとは質が違う。食に関しては関心が高いアメリカだが、業界に戦争を吹っかける様な本を出すことができ、また良く読まれると言うのが「自由の国」ということか。
 
「ファストフードが世界を食いつくす」  エリック・シュローサー 著 楡井浩一 訳 草思社 刊

第十九段 それって犯罪?

  物騒な事件も確かに増えているが、「自己中」の増加でマナー違反も何でもありといった風潮になってきた。こうなると犯罪になるケースも多いと思う。でも、犯罪の範囲内かどうかは意外に解らないものだ。そんな身近に起こりそうなことを判例を使って解りやすく書いてあるのがこの本。目次を拾っても、「自分を助ける為に他人を見殺しにしても犯罪にならない」、「他人の秘密をしゃべって罪になる人、ならない人」、「ケンカしている人間に『もっとやれ!』と声をかけると『現場助成』」、「高齢者を自宅介護と称して放っておけば『保護責任者遺棄』」など日頃気にしていないが、結構知らなかったでは済まされないことが多い様だ。
 こういう御時世、お気楽過ぎて墓穴を掘らない様にチェックすることも大事だが、知識を付けたらもう少し泣き寝入りを減らせるのではないか?
 
「加害者にされない 被害者にならない 刑法の基礎と盲点」  河上和雄 著 講談社+α文庫 刊

第二十段 なんでやねん

  帯に「大阪府検定済み教科書」とある。これを見ただけで笑ってしまった。中身の方は徹底した観察で「大阪人」の気質、習性をこれまたコマゴマと書いている。まあ観察そのものは真面目なもので、大学での講義にもなっているそうだが、やはりその「実情」は笑いを誘うものばかりだ。基本的スタンスが東京への対抗、判断基準が損得といった点が大阪パワーの源なのだが、ムキ出しというか露骨な表現や行動が関東人には新鮮だ。何か隅に置けない大阪をもっと知るための1冊。
 
「大阪学 世相編」  大谷晃一 著 新潮文庫 刊