第百一段 日本経済復活?
サブプライム問題は今も深刻で、アメリカの大手証券会社が兆単位の損失を出す事態になっているが、このサブプライムの破たんを予測していた経済通の人が居る。この人の本を読むのは2冊目だが、理論ガチガチで数字だらけの経済書ではない。各国の流れはこうだからこうなると、大変解り易い。こんなに解り易く書いてあるのに皆なんで読まないのだろうと思うくらいだが、やはり報道と違う話だからだろうか。「新聞の景気予測はあてにならない」という話も聞くが、とにかく現地を回って情報を集めていると物事は良く見えてくるらしい。
で、内容なのだが、今はもう恐慌が始まっているということ。アメリカは滅びないけれども“落ちる”。そのアメリカに経済的にリンクしているから中国もドバイも“落ちる”。石油もバブルだから永遠にガソリンが高いということはない。日本も色々と値上がりしていて苦しいが、サブプライムにあまり噛んでいない点で被害が少ない。技術はあるから日本株も見直されているという。
「社長、不動産の証券化をご存じですか」みたいなCMがあったが、ああいう何でも証券化するやり方が破たんしてしまった。だから投信の様な仮想化したお金のやりとりは過去のモノになって現物主義にもどるというわけだ。とにかく読んでみると良い。書店には何とかで大儲けとか日本はもうおしまいみたいな本ばかり並んでいるが、これを読むと少し落ち着く。それに次は何に投資したら良いか書いている。
「マネーの未来、あるいは恐慌という錬金術」 松藤民輔 著 講談社
第百二段 ドバイ
小さい書店では置いていない文庫だが、シリーズ的にセンセーショナルなものばかり。で、今回はこの今をときめくドバイの話。中身は全然ときめかない話なのだが、ドバイは百一段の本にもチョコッと経済面でのアウトラインは出てきた。観光で行くと解らないのだが、裏側が物凄いらしい。別に「世界一」が並んでいるから物凄いのではない。日本の、というか世界の常識が通用しないらしいのだ。
まずもって、現地の人は働かない。労働者は全部他国からの出稼ぎだ。これを信じられない低賃金で雇う。物価は安くはないので労働者は大変な生活だと。会社オーナーは皆金持ちで、趣味で経営している程度だから簡単に会社を潰す。すると労働者は雇用契約が無くなっただけで刑務所へ収監されてしまうのだそうだ。これ、ルポライターが入って書いているのと違って、日本の若者が寿司職人を目指して現地入りした実体験なのだ。本当に無茶苦茶な実体験だ。こうして本を出しているから良いが、読み進むと「よく生きて帰って来たな」と思ってしまう。だって豚小屋以下の刑務所に入るのだから。あれを日本で作ったら本気で犯罪抑止力になりそうだ。
でも、石油あっての高収入。しかも「労働は恥」という習慣。多くの人が石油が底をついたらどうなるかと言う点も全く考えていないというから驚きだ。石油は枯渇しないまでもバブルがはじけそうな雰囲気。その時ドバイの人たちはどうなるのやら。そっちが心配になってきた。
「地獄のドバイ」 峯山政宏 著 彩図社
第百三段 形
展示会で丸善の特売コーナーを見ていたら、面白いのがあった。丸善さんのは以前にも中毒百科を会場で買ったが、展示会の内容と関係無いものを持ってくるところが良い。他の人も思わず買っているのを見る。
で、今回の本。著者は日本史の教授なのだが、なぜか魔除けモノのコレクター。そちらの方が高じて本を出してしまったというわけだ。ぶら下げモノから刻印、壁のデザインなど一部外国のものを含めて50種類を紹介している。写真と解説で、タイトル通り「百科」になっている。一通り読むと、街中にもよくある“あれ”はこういう意味だったのかと納得できる。古い町並みが好きな人には、観察する楽しみがまた増えるというわけだ。まあ占いなどが好きな人には、収集すべき物が増えてしまって“毒”かもしれないが。
「魔除け百科 かたちの謎を解く」 岡田保造 著 丸善
第百四段 防災グッズ
「防災グッズよりこの1冊!プロが教える実践的非常時対策」と書いてあると、何だか頼れそうな気になるものだ。実際、家が潰れては備えている物資も出せないというわけで、まずヘルメットを雑誌で作ろうというあたりから始まる。こう書くと単にハウツーもので終わるのだが、即座にヘルメットを作ってお父さんは株を上げたと思いきや、材料がエッチなグラビア誌で大ヒンシュク!みたいな話へそれて行く。もう冒頭から笑ってしまうのだ。
いろいろ役立つ方法が書いてあるのだが、全部この調子。“作文”にはオチを入れたい性分の自分も、これには舌を巻く。やられた。オモシロ過ぎる。ついでながら、こういう調子なので電車などで読まない方が良い。ニヤニヤしたり突然爆笑しては周囲から冷やかな目で見られる。
まあ面白い方が記憶に残るというのもあるだろうが、あんまり笑って大事なところを忘れてしまっては意味が無い。でもハウツー本は繰り返し読むことは無いだろうが、“ギャグエッセイ”だと意外と何度も読んだり、人に話したりしそうだ。
「身近なもので生き延びろ−知恵と工夫で大災害に勝つ」 西村淳 著 新潮文庫
第百五段 輸出せよ
「世界恐慌だし、やっぱり不景気だね」という会話ばかり。完全に他所のせいだが、実は日本独自の問題があるのだという本。国内市場は飽和状態で少子高齢化。しかもモノ作りが内向きだから、あの携帯電話さえ世界では無視されるという。もう、冒頭部分を読むと製造業以外の人は自殺したくなってしまう様な話ばかりだが、輸出とか海外から客を呼ぶという仕事に道はあるという。
それでもネットを使えば小さくても地方でも世界進出が可能ということで、その事例や段取りに多くのページを割いている。ハウツー本でもあるが、何で日本市場がダメなのかという部分はやっぱり傾聴に値する。特に、ネット口コミとかIT利用は盛んなはずなのに売れないのは、匿名性が高過ぎるという日本の事情が影響しているとも。海外から見ると異常な状態ということだが、著者はこれは鎖国だと切って捨てる。若者が仲間内の噂だけで満足しているのを憂えている人がいたが、結局大人も同様だったということだ。海外なんかどうでもいいというい人は読まないで良いですと書いているが、本当は皆読んだ方が良い本だ。
「日本人にはもう売るな!」 菅谷義博 著 PHPビジネス新書
第百六段 お仕事
不況だ、仕事が無い、といった重い空気の中でも新しい商売ネタを探す人は多いだろう。そこで惹きつけられるのがこの本。世界の変わった仕事を紹介している。もちろん、結構?なのもある。「日本と事情が違うから」というのもあるだろうが、問題無ければやってみても良いかもしれない。特に「レンタル泥棒」は面白い。万引き犯を演じて捕まるというもの。捕り物劇を客に見せて見せしめ効果を得ようというわけだ。私服警備員も良いが、刺激はこっちの方がある。道具とかは要らないので収益率高そう。
日本にも面白い、いや絶句するサービスがある。それは託父所。ショッピングモールでついつい飽きてしまうお父さんを預かりますというものだ。意外と好評だそうだが、これは秘かな集客システムであった。…やってくれる。
誰もやらない、地域性をうんと活かした、富裕層限定などなど、考えれば見つかるかもしれない。今までだったらただのお笑い本だが、商売の参考書としてお勧めできる。
「世界のオモシロお仕事集」 盛田則夫 著 中公新書ラクレ
第百七段 おひとりさま
独身女性の老後についてはすでに何冊か本も出ている。今回のは雑誌風のムックで、対談や住まいの設計などが載っている。住まい、資産管理、日々の生活法など広範囲にノウハウをご提供というわけだ。まあ女性側の書き方なので、例えばマンションのリフォーム案に“花畑の床”みたいなものも出てくる。この辺りは特異な点だろう。
しかし対談はやはり生々しい。香山リカ、酒井順子、上野千鶴子の「最強負け犬トリオ」(自慢することなのか)が放つ座談会は、独身を勧めているわけではないが、やはり誘惑されるのではないか。これは危険だ。しかも、男の場合を「オスの負け犬」と書いているが、同じ様なものなのにボロクソな言い方。深層には社会への恨みがある様にも思えるが、こりゃあハラスメントだ。
「何だよそれ」と叩きつけたくなる男性諸氏も多いだろうが、「おひとりさま」が凝縮されているという点で異色の本だ。あのリフォーム案の様に、一つの市場として考えてみるのも良いかもしれない。と言うと、急に読みたくなる人も多いのでは?それにしても香山先生、イメージ壊れ過ぎ。
「おひとりさまマガジン」 文藝春秋12月臨時増刊号
第百八段 その後
世界は恐慌状態といっていいのだろうか。で、純金で資産防衛と言う本はいくつか出てきたが、世界の体制はどうなるのかということになるとなかなか無い。特に恐慌の後の世界。「今大変なのに?」という人も多いだろうが、その先を考えないから後手後手になってしまうのだ。特に政治。この本はアメリカの破たんの詳細から世界の変化の予想まで一つながりに書いている。予測モノだが、日本政府を叱る部分も散りばめられている。
数少ない本だし、一人くらいの意見では…と思うかもしれない。けれども「どうしてこうなったか」については確かなことで、世界の“裏”を良く知っておかないと企業戦略も立たないし、投資先を誤って損をすることになる。その辺、良く書いてあるので参考になる。
まあ正月だからかもしれないが、書店には多くのお客さんがいた。やっぱり、時間のある時は本を読んだ方が良い。人の噂であたふたしていたら、ただ騙されるだけになってしまう。
「『大恐慌』以後の世界」 浜田和幸 著 光文社